来年からは携帯電話の新機種が減る?:塩田紳二「モバイルトレンド」

来年からは携帯電話の新機種が減る?:塩田紳二「モバイルトレンド」の記事を読んでいて違和感を感じたので書いてみる。
記事の要約はこうだ。

携帯各社は夏の新機種を発表した。NTTドコモは18機種、ソフトバンクは19機種。その台数も今後は減らざるを得ない可能性がある。
なぜならば、現在の端末売り上げのうち26%は2Gから3Gへの移行のためのものだ。2Gはあと数年以内に使えなくなり、その後は2G→3G乗り換えの需要が失われてしまう。すなわち売り上げが現在の75%になってしまう。
その減少量は非常に大きなインパクトだ。トップのシャープのシェアをしのぐ。
だから今後は機種を減らさざるをえない状況に陥ることだろう。

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090528/1015552/

こんな感じだ。でも待って欲しい。2G→3Gに移行した人は買い換えないのだろうか。そこが根本的に間違っている気がする。
一度携帯を使い始めたユーザはそれが2Gだろうが3Gだろうがかなりの割合で携帯を使い続ける。つまり2G→3G乗り換え組がそのまま消えるのではなく、将来の買い増し組あるいはキャリア変更組に変わるだけで、パイ総数はそう変化しないことが予測できるわけだ。
ただ、現在の2G→3G乗り換え組は色々な餌を使って乗り換えの促進を受けている。これは当然ながら2Gを早期に終わらせてしまいたいからだ。引用元の記事では、ドコモはあと1年ほどで2Gユーザがほぼすべて3Gに移行(乗り換え)すると予測しているらしい。
ここでちょっと別な数字を出す。携帯ユーザは、機種あたりの平均利用月数を迎えると買い換えるとモデル化できる。最近聞いた数字だと、1機種の平均利用月数30ヶ月ほどだったと思う。つまり2年半くらい。最近はこれが伸びる傾向にあるようだ。これは携帯端末の価格高騰(ではなく価格適正化)のためだ。
ここでさっきの数字とあわせて考える。乗り換えまでの期間が1年と、先ほどの平均利用期間2年半の半分以下だ。つまり、餌で釣って無理やり乗り換えさせているのだから、その後1年半は端末があまり売れないのではとも考えられる。
しかしよく考えると、2G→3G乗り換え策はだいぶ前からやっている。同時並行サービス時期ですら3Gは通信料金で優遇されていた。2Gの新期受付が終了したのは半年ほど前。
そう考えていくと、来年当たりは多少の落ち込みは見せるが、目新しい機能(AndroidLTE)をひねり出すことで販売台数的には大きな問題にはならない結果になるだろう。
端末メーカはそのようなパイ減少よりももっと気にしなければならない問題が迫っている。外界から孤立して独自の進化をとげた島の名前からガラパゴス携帯と呼ばれている日本の携帯。対する全世界ほぼ共通の仕様でスケールメリットを最大限生かしてきた海外メーカの携帯の進出。iPhoneBlackBerry、そしてAndroidなどへの人気。総務省SIMロックフリー化策などなど。販売方式変更による端末価格の高騰とそれによる機種あたりの平均利用月数の増加も痛い。(追記)更に追い討ちとして経済低迷、国内市場飽和なんてキーワードもある。
日本国内キャリア向けメーカーは大きな転換期を迎えている。既にいくつかのメーカーは撤退している。機種は今後減る方向なのは確かだが、引用元の示している理由とは大きく異なるのだ。
ということで塩田紳二さん、違うと思いますぜ。

追記

2Gと3Gの端末台数の良いグラフがあった。本当は貼り付けたいのだが、Flashを使っているらしくて無理なのでリンクのみ。NTTドコモの契約数の推移
ピークで2Gが4440万台ほどあったことがわかる。既にほとんどが乗り換え済みである。ただ、残台数を1年で乗り換えさせた場合のカーブが現状よりも急になることは明らかだ。つまり特需。しかし彼の主張する26%が失われるわけではなく、せいぜいその1/10、3%程度だろうと思われる。